院長周辺雑記(78:2013年5月分)




(13/5/2木曜分)
 4月になったら殆ど0となっていたインフルエンザは、4月下旬よりチラホラ来院があり、連休前日の本日はA型1名さまの来院があった。本日発症なので、発症後5日間を経過した6日まで、連休中も自宅安静が必要だ。おきのどくではあるが。下に資料を掲載。
最近5週間のインフルエンザ感染患者数(地区別)推移グラフ (グラフ作成:(財)宮城県地域医療情報センター)
 最近5週間のインフルエンザ感染患者数(地区別)推移グラフ=(グラフ作成:(財)宮城県地域医療情報センター(外部リンク))



(13/5/8水曜分)
午後を休診にして「産業医活動」に参加。帰ってきたらユニ・メディカルの金子さんが来ていてくれて、画像ファイリングシステムM-FiILEにて、デジタル超音波断層診断装置東芝NemioXGpdf書類/PREMIUMの画像データを表示する計画を開始した。先ずM-FILEのサーバーにデータコンバートプログラムをインストール。次に試しとして、東芝の超音波断層画像を、USB出力端子よりUSBメモリーで20例程をM-FILEのサーバーに入力。早速、診察室の大画面液晶モニターで、M-FILEを開いて見たら、高画質の大画像で表示可能であった。サムネイル画像はあるし、超音波画像はサクサク表示されるし、検索はID検索で一発検索。とても使いやすくストレスを感じさせない。これは、いけそうだ。
 後は残りの超音波断層画像をM-FILEに移す作業だけである。今後の新しい検査画像は、超音波断装置のUSB出力端子より直接有線(ベッドサイド検査なので2m長で充分)で診察室のM-FILE子機に落とすだけである。



(13/5/10金曜分)
 冬や夏は良いのだが、春・秋の暖の差が大きい日がこまる。寝付きには暑く、癖でどうしてもベッドの布団を無意識にはね除けてしまう。午前4時過ぎから気温が急降下し、体温も降下するが寒くは感じない。朝になると低体温となっている。電気敷き毛布を強にしておく冬場には、こんなことは起こらない。
 私は生まれつき「本態性高CK血症」(外部リンク)という体質《普段は無症状でも、寒冷曝露による低体温などで、障害筋肉からCK・AST・LD・ALDなどの筋肉内酵素が逸脱して血中に上昇し、全身の障害筋肉の脱力にて、動けなくなる。精査したらマクロCKの出現や、CK-MB高値も見付かった。近親者を採血して調べられた範囲(母と母の姉が、当院に通院中であった)では、母と母の姉では、母の姉が私と同じパターンであった。遺伝素因が関係するのであろう。》がある。
 最初に自覚症状で気付いたのは、中学2年の頃である。夏に志賀高原長距離遠足というのがあって、丁度雨の寒い日になって、途中で下肢筋肉脱力と腓返りでバテてしまい、先生達には何も告げられない、おとなしい私でも、二日目は棄権してしまったことがある。体育教師の西先生からは「根性ないやっちゃな。」と言われてしまった。高校時代も、1500m走計測で1000mを過ぎたあたりから全身脱力で、走れなく徒歩で廻っていたら、「教師をおちょくっている」と思われたのか体育教師は言葉のイジメをかけてきた。高校の体育授業のサッカーでは、走り回るのはムリなので、率先してGKをやらして貰っていた。ある秋雨の降る寒いサッカーの授業では、身体を濡らして冷やさぬよう、傘を差していたら、体育教師にボールを二度ほど頭に叩き付けられ、暴力のイジメも受けた。「本当に弱い物に対する寛容の心」は大切だが、本当に弱い物であるかどうかの洞察力は、体育教師の能力・知識では、彼らに求める方が無理であろう。
本日早朝の低体温症による障害筋肉CK逸脱での脱力にて、本日は診察不能となってしまった。よって本日は、午前はお薬のみ午後は休診となった訳である。



(13/5/12日曜分)
 休みの本日は、国立京都国際会館まで日帰りで 【第85回 日本消化器内視鏡学会】(外部リンク)に参加する予定であった。昨日土曜は、体調万全で仕事が出来たが、一昨日のように体調を崩すと大変なので、期待していた学会だったが、京都までの日帰り旅行は中止とした。楽しみにしていた「教育講演」が聴けなかったので、後日にでも「抄録」を掲載して勉強するつもりである。
 その代わりでもないが、白石から泉のBMW Sendai(ICから500mの近場)まで往復して、BMW Z4 Mロードスターを夏タイヤに交換してもらった。この夏タイヤは、新車時から付いていたドイツの会社Continental製のContiSportContactというタイヤである。2007年10月登録で23000km乗っているが、外観的には溝も充分残っているし細かいひび割れやトレッド面の方減りもない。グリップ感とコントロール感は、少しずつ低下している感じ。しかし、タイヤも6年間も経つと、タイヤコンパウンドの大きい劣化は避けられず、非常時に大変危険である。この夏タイヤは、遠からず新品に交換予定である。それと、アライメントを取り直し、ジオメトリーもチェックしてもらわなくちゃ。

教育講演 1:「上部消化管腫瘍に対するESDとその先にみえるもの
東京大学医学部附属病院 光学医療診療部 藤城 光弘 先生
司会:北里大学 名誉教授 比企 能樹 先生

教育講演 2:「消化管リンパ腫の診断と治療
九州大学先端医療イノベーションセンタ一 中村 昌太郎 先生
司会:藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院 内科 芳野 純治 先生

教育講演 3:「胃カルチノイドの取り扱い
横浜栄共済病院 外科 細川 治 先生
司会:新潟大学 名誉教授/株式会社ピーシーエルジャパン病理・細胞診センター 特別顧問 渡辺 英伸 先生

教育講演 4:「カプセル内視鏡の基本と最新情報
獨協医科大学 医療情報センタ一 中村 哲也 先生
司会:日本医科大学 消化器内科学 坂本 長逸 先生

教育講演 5:「内視鏡医に役立つ統計学
国立がん研究センター がん対策情報センター 山本 精一郎 先生
司会:防衛医科大学校 三浦 総一郎 先生

教育講演 6:「膵腫瘍に対する腹腔鏡下治療
川崎医科大学 消化器外科 中村 雅史 先生
司会:九州大学大学院医学研究院 臨床・腫場外科 田中 雅夫 先生

教育講演 7:「消化管のEUS
ムラタクリニック 村田 洋子 先生
司会:北里大学名誉教授/ 北里大学東病院 内科 西元寺 克禮 先生

教育講演 8:「消化器内視鏡における感染対策
山梨大学医学部 第一内科・光学医療診療部 佐藤 公 先生
司会:愛知医科大学病院 消化器内科 内視鏡センタ一 春日井 邦夫 先生

教育講演 9:「Barrett食道腺癌内視鏡診断の現況と展望
国際医療福祉大学 化学療法研究所附属病院内視鏡部 天野 祐二 先生
司会:兵庫医科大学 消化器内科 上部消化管科 三輪 洋人 先生

教育講演 10:「緊急医療における内視鏡診断と治療
帝京大学医学部附属病院 内科 久山 泰 先生
司会:大阪市立大学大学院医学研究科 消化器内科学 荒川 哲男 先生

教育講演 11:「消化器内視鏡医における臨床研究のあり方,進め方
浜松医科大学 臨床研究管理センター 古田 隆久 先生
司会:東京医科歯科大学 消化器内科 渡辺 守 先生

教育講演 12:「内視鏡を用いた上部消化管運動機能の評価
川崎医科大学 総合臨床医学 楠 裕明 先生
司会:名古屋市立大学大学院医学研究科 消化器・代謝内科学 城 卓志 先生


第85回 日本消化器内視鏡学会】 「教育講演抄録集
 教育講演 1:上部消化管腫瘍に対するESDとその先にみえるもの

 東京大学医学部附属病院 光学医療診療部 藤城光弘(ふじしろ みつひろ)

 1980年代に開発されたERHSEより端を発し、EMRのー亜型として開発、改良が行われていたESDは、2006年4月に胃・十二指腸、2008年4月に食道においてEMRから独立した手技として保険収載された。ESDの特徴は、病変周囲の粘膜を切開し、粘膜下層を剥離して切除する技術のため、理論上、切除できる大きさに制限がなく、また、粘膜下層の線維化を有する病変も切除できることにある。現在までに、高周波ナイフ、その他の各種処置具、局注液の開発、更には、最適な治療環境、周術期管理について多くの知見が集積され、本邦を中心に、良好な短・中期の後ろ向き治療成績が数多く報告されている。しかし、食道、胃、十二指腸と其々の臓器で未だに解決しえない問題点が存在するのも事実である。
 食道では、術後狭窄の克服が必須であり、病変が3/4周性以上に進展する場合、バルーンによる予防的拡張術を行うのか、粘膜欠損部へのステロイド局注なのか、ステロイド内服なのか、の検証が必要であり、研究段階ではあるが、生体吸収型ステントや生体吸収性ポリマーシートによる食道再生療法なども行われており、近い将来に臨床応用されることを期待したい。
 胃では、2010年10月以降、未分化型への適応拡大の舵が切られたが、その検証が急務である。さらに近年では、胃の粘膜下腫湯に対するESD技術と腹腔鏡技術を組み合わせたLaparoscopic and endoscopic cooperative surgery (LECS)、その亜型であり我々が開発したNon-exposed endoscopic wall-inversion surgery (NEWS) なども積極的に行われるようになっている。現在はGISTを主な対象病変としているが、リンパ節転移のない胃癌への応用が最終目標であり、リンパ節転移検索技術の開発と共に、ESDと定型胃切除術の中間に位置する、胃癌縮小手術と位置付けられることを期待したい。
 十二指腸では、その安全性と病変自体の生物学的悪性度の観点から、ESDの必要性についても議論がある。私見では球部は胃と同様の考えでESDを行うことが妥当と思われるが、下行脚以深については、分割EMRや外科的局所切除、LECSなど、症例に合わせた慎重な治療適応の選択が求められよう。
 今後は、リンパ節転移頻度からみた更なる適応拡大とトレーニングシステムの確立による国内・外への更なる普及が、ESDを巡る共通の課題として模索されていくものと思われる。日本初のESDは、本邦ではすでに成熟期に入った感があるものの、海外に目を向けると、本邦と大きく異なり、主要都市ですらESDが受けられる状況にない。海外へのESD技術移入を目指した、産学官の取り組みをより積極的に行っていくことも我々の責務であると考えている。
 教育講演 2:消化管リンパ腫の診断と治療

 九州大学先端医療イノベーションセンター 中村昌太郎(なかむら しょうたろう)

 消化管は悪性リンパ腫の好発部位であり、消化管原発リンパ腫は節外性リンパ腫の30〜50% を占める。消化管腫瘍の中では、リンパ腫の頻度は1〜10% と低いが、日常臨床においては、癌や炎症性疾患との鑑別を要する重要な疾患である。浸潤部位は、消化管の中では胃が最も多く60〜80% を占める。次いで小腸が多く(20〜30%) 、大腸や食道はまれである。しばしば多発し、5〜15% の例では複数の消化管部位に病変を認める。
 リンパ腫の診断には病理組織検査が必要である。組織型は多彩であり、WHO分類(第4版,2008年)に従って診断する。消化管ではMALTリンパ腫とびまん性大細抱型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma :DLBCL)の二型が70〜80% を占める。ほかには、濾胞性リンパ腫、T細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫などがみられる。確定診断には免疫組織化学染色が必須であり、特異的な遺伝子異常の検索も有用である。
 肉眼分類として確立されたものはないが、演者らは、胃リンパ腫は表層・腫瘤・ぴまん・その他の4型に、腸管リンパ腫は隆起・潰瘍(狭窄・非狭窄/動脈瘤)・MLP (multiple lymphomatous polyposis)・びまん・混合の5型に分類している。組織型と肉眼形態には相関があり、胃リンパ臆のうちMALTリンパ腫は表層型、DLBCLは腫瘤型が多い。腸管リンパ腫は多彩な肉眼形態を呈し、最も多い潰瘍型はDLBCLが大半を占め、びまん型はT細胞リンパ腫とIPSID (immunoproliferative small intestinal disease)、MLP型は濾胞性リンパ腫やマントル細胞性リンパ腫に特徴的である。
 リンパ腫の診療には臨床病期が重要であり、消化管リンパ腫はLugano国際会議分類(T,U1,U2,UE,W) に従って診断する。病期診断のためには頚・胸・腹部CT,FDG-PET/CT,バルーン内視鏡やカプセル内視鏡による小腸検査、骨髄検査などが必要である。
 胃MALTリンパ腫の第一選択治療法はHelicobacter pylori 除菌であり、60〜80% の例で完全寛解が得られる。H.pylori陰性、進達度SM以上の深部浸潤例やt(11 ; 18)/API2-MALT1転座陽性例では除菌治療が奏効し難い。除菌無効例には、慎重な経過観察(watch and wait) ,放射線療法,化学療法や抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブを用いた免疫療法が選択される。最近、本邦の多施設共同試験で、H. pylori除菌治療後の長期予後がきわめて良好であることが確認された (Nakamura S,et al. Gut 2012)。胃DLBCLに対しては、リツキシマブ併用化学療法(+放射線)が勧められるが、H. pylori陽性の限局例(T/U1期)では、除菌治療で30〜60% の例で寛解が得られる。
 腸管リンパ腫のうち、限局例には外科的切除+化学療法が一般的である。T/U1期の濾胞性リンパ腫にはwatch and waitやリツキシマブ単剤療法が選択される。IPSIDや十二指腸・直腸のMALTリンパ腫には抗菌薬治療が奏効することがある。病期進行例には化学療法を第一選択とする。消化管リンパ腫の予後規定因子として、発生臓器(胃より腸が不良),病期,年齢,T/B表現型,組織学悪性度などが報告されている。
 以上のように、消化管リンパ腫の治療には多くの選択肢があり、組織型と病期により予後が異なるため、治療前の正確な診断が重要である。本講演では演者の施設における消化管リンパ腫630例の解析結果を中心に、各組織型に特徴的な肉眼形態と遺伝子異常、ならびに至適治療法について考察したい。
 教育講演 3:胃力ルチノイドの取り扱い

 横浜栄共済病院 外科 細川治(ほそかわ おさむ)
 福井県立病院 病理 海崎泰治

 1907年にOberndorferは「癌に似て、さに非ず」という意味を込めてカルチノイドを提唱した。癌に類似する組織形態を有するが、臨床的に低悪性度の経過をたどる一群の腫瘍を表す呼称である。わが国では直腸、呼吸器、胃、十二指腸、虫垂の順に多く発生している。経験数が少ないこともあり、臨床診断に難渋するのみならず、分類が複雑に入り組んでいることから臨床医にとって本腫瘍を理解し、治療方針を決定することに戸惑いが多い。
 胎生学的発生部位に基づき、前腸、中腸、後腸系の3群に分類する方法、組織学的特徴に基づき、充実結節型、索状・吻合状型、管腔状・腺房状・ロゼット状、低分型、混合型に5型に分類する方法に加え、腫瘍細胞の銀反応性、電顕による神経内分泌穎粒の形態的特徴、産生されたアミン・ペプタイドの種類からの区分も行なわれた。さらに2010年のWHO Classificationでは分類上での大きな変化がもたらされ、胃カルチノイドは神経内分泌腫瘍 Neuroendocrin tumour (NET) G1と呼ばれることになり、名称そのものがフェードアウトする気配さえある。
 ともかくも、胃に発生したカルチノイドは他臓器のものと異なる。本腫蕩の多くはヒスタミンを分泌するクロム親和性顆粒を持つEnterochromaffin-like cell (ECL細胞)に起源を有し、3つに亜分類される。TypeTはA型萎縮性胃炎を背景に持ち、Type II はZollinger-Ellison症候群に伴い、高ガストリン血症のtrophic action を受けてECL細胞の増殖、過形成、腫瘍化に至る。sporadic なTypeVは悪性度が高い。TypeTは幽門腺領域の非萎縮粘膜に対して高度に萎縮した胃底腺粘膜領域に発生して、多くの場合は1cm以下の大きさで多発する。Type II は高酸分泌能を有する過形成胃粘膜上に診断され、同様に大きくなく、多発する。TypeVは大半が単発であり、背景粘膜に特徴的な所見に乏しく、大きさはさまざまであるが、転移を来した例でカルチノイド症状を有したことも報告されている。3つのTypeの個々の腫瘍の肉眼形態は背景粘膜を除いては違いが少ないが、TypeT,Uにおいては腫瘍周囲の平坦な粘膜からの生検でも増殖性のendocirine cell micro nestsが見出される。
 悪性度の高いTypeVに関しては癌と同様の取り扱いが必要となる。他方、高ガストリン血症に伴って発生するTypeT,Uにおいては異なる取り扱いが提起されている。すなわち、腫瘍の大きさや深達度、核分裂像やki67指数などの悪性度により局所管理法としては切除だけではなく経過観察の手法があり、さらに高ガストリン血症に対する対策として分泌領域の幽門洞切除を行なう方法も行なわれている。臨床データに基づいて正確な病型分類を行うことが、胃カルチノイドの取り扱いに関しては重要である。
 教育講演4:カプセル内視鏡の基本と最新情報

 獨協医科大学 医療情報センター 中村哲也(なかむら てつや)

 本講演では、まずカプセル内視鏡の基本と国内外における現況を紹介し、ギブンのパテンシーカプセルが認可されたことによって大きく変化したカプセル内視鏡の保険適用について解説する。さらに、カプセル内視鏡の最新情報について紹介したい。
 カプセル内視鏡の現況
 日本で使用可能なカプセル内視鏡は、2012年12月現在ギブンとオリンパスの小腸用カプセル内視鏡2機種である。また、2012年7月にはパテンシーカプセルが保険適用になった。
 海外では韓国製や中国製の小腸用カプセル内視鏡が実用化され、ギブンは第二世代の食道用や大腸用のカプセル内視鏡を開発し、さらに第三世代のカプセル内視鏡の開発を始めている。その上、ギブン、オリンパス共に可動式のカプセル内視鏡を開発し、実用化に向けて検討を重ねている。なお第二世代大腸用カプゼル内視鏡PillCam COLON2は日本での治験が終了し、認可申請中である。
 保険適用の拡大
 小腸用カプセル内視鏡は、上部および下部消化管の検査(内視鏡を含む)を行っても原因不明の消化管出血を伴う患者に使用した場合にのみ保険が適用され、確定診断済みのクローン病などは禁忌とされていた。カプセル内視鏡のほぼ唯一の偶発症は、滞留(retention:消化管内の狭窄部の口側にカプセルが2週間以上とどまること)である。そこで、滞留をおこさないように消化管の適切な開通性を評価する目的でパテンシーカプセルが開発された。それは小腸用カプセル内視鏡と同じサイズ( 幅約11mm、長さ約26mm)の嚥下可能な崩壊性カプセルで、10%の硫酸バリウムを含むラクトース製のボディとラクトース性のタイマープラグから成り、非溶解性のコ一テイ一ング膜で覆われている。消化管内で30時間以上とどまるとタイマープラグが溶け始め、100〜200時間たつと完全に崩壊する日本独自のカプセルである。パテンシーカプセルを併用することにより、カプセル内視鏡の適用対象は小腸疾患が既知又は疑われる患者に
拡大された。
 カプセル内視鏡の最新情報
 カプセル内視鏡は1秒あたり2枚の画像を撮影し、最近では1検査あたり最大で10万枚以上の静止画が撮影されるようになった。また、第二世代小腸用カプセル内視鏡では画質が格段に向上している。このカプセル内視鏡画像を読影するのに重要な動体視力を向上させるためには、これまでの内視鏡検査とは異なったトレーニングが必要になる。2012年4月に、世界で初めてのカプセル内視鏡関連学会である「日本カプセル内視鏡学会」が設立された。
 おわりに
 カプセル内視鏡は機器やソフトウェアの目覚ましい進歩により、これまで以上に効率的かっ正確な読影と診断が求められるようになっている。今後、大腸用カプセル内視鏡が使用可能になれば、これまで以上の読影力が要求される。カプセル内視鏡検査に携わる医師は、本学会におけるカプセル内視鏡関連セッションや、日本カプセル内視鏡学会などに積極的に参加して、読影力の向上をめざしていただきたい。
 教育講演 5:内視鏡医に役立つ統計学

 国立がん研究センター がん対策情報センター 山本精一郎(やまもと せいいちろう)

内視鏡医に役立つ統計学
 臨床研究の種類を分ける方法はいろいろあるが、疫学・統計学的には次の4つに分けると、必要な研究デザインや仮説、統計手法を整理しやすい。多くの場合、専門分野によって4つのうちよく使う研究の種類があるが、内視鏡医は、4つともよく用いるのではないだろうか。
 一つ目は、診断研究である。正確、精確、簡便、侵襲が少ない、使いやすいといった種々の意味でより「よい」診断方法が開発された場合に、病理診断などの至適基準(gold standard) と呼ばれる正診に対してどのくらい一致するかを、感度、特異度といった指標を用いて調べる研究である。どのような診断の場で用いられるのか、検診の場で用いられるかによって、研究対象者、達成すべき感度、特異度の値も変わってくる。
 二つ目は治療開発研究である。抗がん剤開発に代表されるような、phase l,2,3 と順に毒性や安全性、有効性を調べ、最終的に既存治療との優劣をランダム化比較試験で検証する研究デザインである。内視鏡や手術の治療開発の場合、この順}に開発を行うことは稀かもしれないが、標準治療になるまでに、安全性の確認と、有効性の検証を行うことが必要なのは同じである。化学療法の場合と異なり、技術のラーニングカーブや標準化、品質管理を考慮した研究を行う必要がある。手術に比較して低侵襲な内視鋭による治療が優れている検証するには、生存期間で劣っていないことを証明する非劣性デザインを用いれば十分な場合もあるであろう。
 三つ目は、予後因子研究、すなわち、診断時の情報をもとに予後を予測する方法を調べる研究である。予測される予後によって治療方針を変更する、その集団に対する治療開発を行うことが予後因子研究の目的だとすると、どんな因子で予後が予測できるか、なぜその因子で予測できるのかといったことよりも、(理由はわからなくとも)高い確率で予後が予測できる方法を開発することが目標となる。この際、手元のデータで予測ができることを調べるだけでは不十分で、開発した予測方法が別の対象者(別のデータセット)でも十分役に立つかを調べることが必須となる。分子標的薬の開発に伴い、コンパニオン診断として現在多くの研究が行われている分野である。
 四つ目は、病気の原因を調べるいわゆる疫学研究である。ビロリ菌が胃がんの原因であるとか、遺伝的多型によって食道がんに対する喫煙や飲酒のリスクが異なるといった研究である。コホート研究やケース・コントロール研究といった観察研究を行って原因となる曝露(exposure) が調べ、その曝露を除く(もしくは増やす)ことにより疾患が予防できるかを調べるランダム化比較試験を行うことが大きな目的である。内視鏡医が観察研究を行う場合には、内視鏡所見をサロゲートエンドポイントとしたケースコントロール研究が有力な研究デザインとなると考えられる。
 これまでの私の経験から、内視鏡医が行うであろう研究と4つの研究の種類との関係を記述してみた。これには必ずしも現状を反映していないところもあると考えることから、今後内視鏡医とよく相談し、学会当日には、より内視鏡医に役立つ研究デザインや統計手法の紹介をしたい。
 教育講演 6:膵腫瘍に対する腹腔鏡下治療

 川崎医科大学 消化器外科 中村雅史(なかむら まさふみ)
 九州大学大学院 医学研究院 臨床・腫傷外科 田中雅夫

 はじめに:膵切除術は、1930年代から40年代にかけてWhippleらにより確立されたが、その後、胃温存形式や再建法の変遷を経ながらも基本的に大きな変更はなかった。ところで、1987年に腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われて以来、腹腔鏡下手術の適応は消化器外科手術の様々な分野に急速に広がった。膵臓外科分野もこの例外ではなく、1994年にGagnerらが腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術(LPD) 第一例目を報告し、1996年には同じくGagnerらが最初の腹腔鏡下膵体尾部切除術(LDP) を報告した。その後、手術器械の改良も手伝って、LDPの報告例は2006年頃より急速に増加してきている。初期のLDPに関するメタ・アナライシスの結果では、開腹手術と比較してLDPは非劣性であるが優位性は示されていなかったが、最近では、短期成績が開腹手術よりも良好であるとする解析結果も明らかになりつつある。LPDも報告例が増加しつつあるが、周術期の有意性を示す報告はあまりない。このような趨勢の中で、H24年から本邦でもLDPが良性腫瘍に対し保険収載されることとなった。本講演では、保険収載された良性腫蕩に対するLDPの基本事項を中心に、腹腔鏡下膵切除の全般に関して概説する。
 LDP:脾摘を伴う術式では内側アプローチが一般的に行われている。脾温存の術式はWarshaw法と脾血管温存術式の2法があるが、可能であれば血管温存術が望ましい。血管温存術施行時は、膵体部中央部で脾血管が膵実質に埋没する構造を認識する必要がある。また、脾動脈のみの温存は遠隔期の静脈瘤出血の危険性があるので、脾静脈を温存できない場合は脾動脈も離断する必要がある。膵液瘻防止策としては、膵の切離時圧縮が重要であるということが報告されているが、硬化膵や厚い膵ではDuVal法に準じた膵断端の内瘻化も考慮する必要がある。現在、浸潤性膵管癌は保険適用ではないが、将来的に適応拡大される場合に重要なポイントとしては、リンパ節郭清の精度と剥離面の癌陰性化がある。このうち、リンパ節郭清は腹腔鏡下胃切除術でほぼ確立されているので、剥離面の陰性化が開腹と遜色ない程度に可能であれば、今後の適応拡大も安全に行えると予想される。
 LPD: LPDは未だ実験的な術式であり、その臨床的なメリットも明らかにされていない。このため術式も定型的と呼べるものはないが、咋今報告される術式の多くで膵頭十二指腸の授動を左側より行う傾向にある。これは、腹腔鏡では、臍を中心とした放射線方向への水平に近い視野がより得られやすいということが理由であると思われる。また、同様の理由より、上腸間膜動静脈も左右方向でなく上下方向に並列している脈管として視認されやすい。再建は小開腹下に膵消化管吻合を行う場合と完全鏡視下に行う場合とがあるが、現状では、より安全な再建術式が望ましい。
 教育講演 7:消化管のEUS

 ムラタクリニック 村田洋子(むらた ようこ)

 超音波内視鏡が開発された当時より、現在まで行ってきた、食道癌の進行度診断を中心に消化管全般に渡って、超音波内視鏡診断(EUS) について報告する。
 消化管壁
 消化管は粘膜、粘膜下層 固有筋層 漿膜または外膜の構造をしている。超音波は周波数により分解能が異なる。一般的に使用される中心周波数7.5MHzでは、5層構造に分離される。しかし、食道、大腸など
の薄い管腔では、3層として描出されることもある。低エコーにみえる固有筋層が最も描出されやすく層をみる場合のメルクマールとなる。その上の粘膜下層は、高エコーとして描出、粘膜は胃の腺組織では、低エコーに描出される。ここに複雑に絡んでくるのが、境界エコーである。境界エコーは周波数が高いほど、薄く、低いほど厚い境界エコーが生じる。従って20,30MHzを使用した場合は、層の分解は良く、境界エコーの幅も薄くより病理組織に近い像が得られるようになる。また、均一な組織は内部にエコーを反射するものが無い場合は、低エコーで均一に、内部に血管、繊維組織のある場合は反射するため、ややエコーレベルが高く、脂肪組織などは、高エコーに描出される。層構造を読むときは、まず、ビームが垂直に入射されているかどうか、固有筋層の低エコーはどれかを目安に、その上の高エコ一層を粘膜下層、その上の低エコー層を粘膜として読影すれば良い。
 深遠度診断
 癌腫は低エコー腫瘍として描出されることが多いが、この低エコー腫瘍がどこまで層を破壊し、どの層が保たれるかによって診断する。癌巣が薄い粘膜癌は、周波数が低ければ描出が難しい。正常の粘膜より厚く、または低エコーに描出される。癌巣が薄いものは、癌の反応による細胞浸潤リンパ濾胞形成なども診断を難しくする。
 粘膜下腫瘍
 腫瘍がどの層由来か、腫瘍のエコーレベル、構造より組織診断が予測できる。この場合もどの層と連続しているかが重要となる。良悪性の鑑別には経時的な大きさの変化と穿刺細胞診による判定が必要になる。
 リンパ節転移診断
 メルクマール臓器を目安に、どのリンパ節が腫大しているか診断する。リンパ節の形態から転移の可能性が示唆される。正確な診断は穿刺細胞診により腫瘍組織を獲得する。
 機能診断
 噴門部の形態の3次元表示や、形態の動きを観察する事により、機能診断も可能となる。上記診断につき、重要な点、困難な点につき述べる。
 教育講演 8:消化器内視鏡における感染対策

 山梨大学医学部 第一内科 光学医療診療部 佐藤 公(さとう ただし)

 はじめに
 内視鏡検査は消化器疾患の診断と治療に不可欠のものとなっており、スクリーニング検査から、外科手術に比べて侵襲性が低いなどの理由から日和見感染をきたしやすいハイリスク患者に対する内視鏡治療まで、さまざまな医療場面で用いられている。
 院内感染対策の中で最も基本となるものは接触感染予防であり、その中心になるのは「汗を除くすべての体液は感染源となりうる」という標準予防策(standard precaution)の概念である。体液との接触が避けられない消化器内視鏡に求められる感染対策とはどのようなものであろうか。本教育講演では、内視鏡医および内視鏡室の責任者として知っておくべき、ガイドラインを踏まえた消化器内視鏡の感染対策および残された課題を解説することで、その責を果たしたい。
 消化器内視鏡に伴う感染の実態と本邦における対応
 消化器内視鏡に関連した感染としては、文献的には細菌、真菌、ウイルスの感染の報告がある。アメリカにおける消化器内視鏡に関連した感染の頻度は180万件に1件程度とされるが、この数値には報告されない、あるいは認識されない感染症が相当数存在することが指摘されている。高水準消毒が普及した1993年以降の消化器内視鏡に関連した微生物の伝搬のほとんどが、誤った感染予防策や内視鏡や不適切な付属品・処置具の洗浄・消毒と関連している。また、ERCPなどの侵襲性の高い手技や鉗子拳上装置などの複雑な構造を有する内視鏡では、感染の頻度が高いことが知られている。
 本邦においては、消化器内視鏡の洗浄・消毒の必要性が強く認識される契機となったのは、1980年代半ばから内視鏡検査後に発症する急性胃粘膜病変が多数報告されたことである。後に、その原因がHelico bacter pyloriの内視鏡を介した急性感染であることが判明し、内視鏡の洗浄・消毒を中心とした感染対策への関心が高まっていった。第一次日本消化帯内視鏡学会消毒委員会(委員長:春日井達造)は全国調査を実施し、内視鏡検査を受けた患者の8.5%においてB型肝炎マーカーの陽性化が認められ、グルタルアルデヒドを用いた消毒で感染が防止できることを1985年に報告した。1995年に日本消化器内視鏡学会甲信越支部消毒委員会(委員長:藤野雅之)から本邦初めての消化器内視鏡の消毒ガイドラインが発表された。その後、1996年には日本消化器内視鏡技師会安全管理委員会から、1998年には第二次消化器内視鏡学会消毒委員会(委員長:小越和栄)から、検査間の洗浄・高度水準消毒の推奨、観血的処置に用いられる処置具は減菌あるいはディスポーザブルとすることなどを含む、「内視鏡機器の洗浄・消毒に関するガイドライン」が発表された。2008年に日本消化器内視鏡学会、日本消化器内視鏡技師会、日本環境感染学会が合同で作成した「消化界内視鏡の洗浄・消毒に関するマルチソサイエティ・ガイドライン」では、内視鏡室の環境、検査前・検査時の対応、内視鏡および処置具の洗浄・消毒について具体的な対応が示され、今後更に改定が予定されている。
 消化器内視鏡に関する感染制御
 一般に感染の成立には、原因微生物の存在と感染成立に十分な量の微生物との接触、感受性部位の存在、感染経路の存在が必要である。感染制御とは、一つ以上のこれらの要素を絶つ対策を意味する。病原微生物の種類、行われる医療行為、宿主の免疫状態などに応じて、感染成立に関わる条件は異なるため、安全性を担保するためには、一定の感染対策を恒常的に行うことが重要である。このためには、スコープの洗浄・消毒だけでなく、内視鏡の検査開始から次の患者に再使用するまでの切れ目のない対応が不可欠である。
 医療従事者への感染・有害事象
 消化器内視鏡に関した感染には、患者間の交差感染とともに、医療従事者への感染も懸念される。その実態の把握は困難であるが、消化器内視鏡従事者には有意にHelicobacter pylori感染者が多いとする報告もあり、ガウン、手袋、マスクなどの個人用防護具(Personal protective equipment) の使用による接触感染予防が重要である。また、高水準消毒薬の中には刺激性のある薬剤もあり、内視鏡スタッフの限や呼吸器に障害を起こすことがあり、一時社会問題化した。厚生労働省からの通達により、グルタルアルデヒドについては、蒸気曝露を基準値以下に抑え、それを維持できる換気設備の設置が求められている。
 おわりに
 消化器内視鏡に限らず院内感染対策は、より厳密な対応が求められる傾向にある。内視鏡を含めた医療材料の再処理に関しては、より均ーかつ高い精度で行い、その精度を監査し、記録するという流れが海外を追う形で進行している。医療施設の規模によらず、安全な内視鏡医療を提供するために感染対策の徹底が極めて重要である。
 教育講演 9:Barrett食道腺癌内視鏡診断の現況と展望

 国際医療福祉大学化学療法研究所附属病院 内視鏡部 天野 祐二(あまの ゆうじ)

 近年、本邦でもGERD症例の著しい増加とともに、Barrett食道、更にそれを母地とするBarrett食道腺癌症例が増加しつつある。現在、欧米で最も増加率の高い癌がBarrett癌となっており、Barrett食道症例の死亡率も一般人口の25倍に上昇していることを鑑みると、本邦でも真撃な態度でBarrett食道・腺癌に向き合うべき時期に来ていると思われる。Barrett癌はSM浸潤とともに予後が急激に不良となることが報告されているが、DMM症例でも10数%に脈管侵襲を認めるなど、より早期に発見し、内視鏡治療を行うのが理想であることは言うまでもない。今回、Barrett食道及びBarrtt癌内視鏡診断のポイントなどについて現況と将来の展望を解説する。
 1. Barrett食道の内視鏡診断
 内視鏡的にBarrett食道を診断するためのlandmarkが、本邦では食道柵状血管の下端、欧米では胃縦走襞の最口側となっていることが、臨床の場に少なからず混乱を与えている。柵状血管を観察するにあたって、胃内の空気を少なくし、被検者に深吸気をしてもらうことで、被検者聞の観察環境をほぼ一定の条件に揃えることが可能である。しかしながら、LSBEでの観察率は低く、また逆流性食道炎による炎症の強い粘膜、異型性病変が存在する場合には観察できない。胃の襞口側端の診断一致率は、静止画像では食道柵状血管のそれよりも高いが、術者間での観察空気量の違いが診断一致性を大きく妨げる。後者のlandmarkを用いたC&M分類がglobal consensusを得つつあるが、柵状血管に重きをおいた内視鏡診断は、微小Barrett食道腺癌を診断する上でも意義は深く、早期にBarrett食道における低い内視鏡診断一致率を解決する必要がある。
 2. Barrett食道腺癌の内視鏡診断
 Barrett癌は食道前壁から右側壁に多いことが知られており、この部位を丹念に観察することが肝要となる。通常光内視鏡診断では、柵状血管の不自然な消失・発赤が重要であり、初期微小癌の発見に繋がる。色素内視鏡を含めた広義のimage-enhanced endoscopyは、Barrett癌を効率よく発見する上で有用であることは衆目の認めるところであり、積極的に併用すべきである。Mucosal及ぴcapillary patternの詳細な観察は、Barrett癌の存在診断や範囲診断をより正確なかつ簡便なものにするが、pattern分類は確立されておらず臨床応用には未だ問題点も多い。食道学会では拡大内視鏡診断基準の作成が始まっており、今後の動向を注視していきたい。また、本邦も内視鏡サーベイランスが必要な時期に来ていると思われる。SSBEが圧倒的に多い特徴などを考慮し、高い内視鏡技術を駆使した本邦独自の効率の良いサーベイランス法を確立する必要がある。
 教育講演 10:緊急医療における内視鏡診断と治療

 帝京大学医学部 内科学講座 久山 泰(くやま やすし)

 我が国の緊急医療において消化管疾患は高頻度でありかつ多岐にわたっている。救急疾患を扱う医療機関では、常時内視鏡を用いた処置が可能な体制が必要である。ここでは当院の診療体制を示しながら、緊急医療における内視鏡の関わりについて述べる。
 当院では、独歩の消化器疾患患者は、日中は内科外来、夜間はER外来に来院する。救急車の場合はER(2次救急)及び救命救急センター(3次救急)が窓口となっている。いずれも初療を外来担当医が行い、日中は消化器科病棟責任医師に、夜間はオンコール医師(指導医1人+卒後3-6年目1人)に連絡、緊急内視鏡の必要性を判断する。消化管出血症例については、採血検査(血液型判定、クロスマッチ採血)、レントゲン等の他、可能な限り腹部造影CT検査を施行し、疾患の診断及び現在の出血の評価を行う。上部消化管止血(非静脈瘤疾患)では、止血クリップ、高張エピネフリン局注の{也、アルゴンプラズマ凝固による焼灼法を頻用している。内視鏡止血が困難な症例では、外科当直医及び放射線オンコール医師と連絡をとり、動脈塞栓術や緊急手術を行う。緊急に減圧術が必要と判断された腸閉塞症例では、まず透視下でのイレウス管挿入を試みるが、挿入困難例では内祖鏡下で挿入を行っている。消化管異物についてはCTで評価を行った後に摘除の必要があると判断された場合には、外科当直医と連携しながら内視鏡的除去を試みている。
 急性化膿性胆管炎など胆道緊急症については、可及的速やかに内視鏡による胆道ドレナージを試みる。高齢者が多く抗血栓薬を服用している症例も少なくなく、また情報が不十分である場合もあるため、当院では緊急時には原則としてドレナージのみを行い、後日除石などの治療を行っている。また敗血症を伴っている重症例も少なくないため、必要に応じて他の消化器医や内科当直医に応援を要請し、安全面に配慮しながら施行している。
 最近の傾向として、大腸憩室出血などの下部消化管出血及び急性胆管炎が増加している。いずれもより労力及び技術を必要とするため、緊急を担当している医師の負担が増加している。日常業務を行いながら夜間のオンコールにも対応しているが、緊急症例が増加傾向であり過剰労務の傾向にある。コメデイカルスタッフも含め、全病院的な体制作りが必要と考える。
 教育講演 11:消化器内視鏡における臨床研究のあり方、進め方

 浜松医科大学 臨床研究管理センター 古田 隆久(ふるた たかひさ)

 消化管疾患は患者数も多く、また、疾患構造も時代とともに変遷しており、当然のことながら、内視鏡検査の診断機器、治療法の開発が必要であり、そのための研究も盛んに行われている。研究成果を実臨床に応用するためには、有効性・安全性を実際の患者さんで検証されることが必要であり、そのためには、質の高い臨床試験によってエピデンスとして認められる必要がある。
 ヒトを対象とした試験である臨床試験では、守られるべき原則がある。ひとつは、倫理的原則である。ヒトを対象とした試験である以上、倫理的な配慮のないプロトコールでの試験はありえない。また、科学的原則も重要である。用いる手段全てが科学的に検証されており、解析も正しい統計的手法によらなくてはならない。そして、データの信頼性である。当然、人の行う事であるから、エラーはつきものであるが、そうしたエラーが排除され誤差の少ないデータでなくてはならない。この3つの原則を守ってできた臨床試験の結果こそあらたなエビデンスとして認められるのである。
 内視鏡検査を用いた臨床試験では、いくつかの独自の問題点がある。評価項目に内視鏡所見がある場合には、病変の写真の質、発見率等は個々の症例の違いに加えて術者の技量に影響する。検査時間等も同様である。機器の使い勝手の評価も術者で異なるであろう。所見の記載にしても、用語の統ーはしていても個々で解釈が微妙にことなるため、バラツキがおこりやすい。数字では表現できない内容が多く、いかに普遍性・再現性のある評価を行っていくかがポイントとなる。
 内視鏡検査を用いる臨床試験ではそうした内視鏡検査独自の問題点があるためいくつかの工夫がされている。内視鏡所見が評価項目の場合には中央判定といって術者とは別に数名の内視鏡医が合議制で写真のみに基づいて所見を判定している。なるべく術者間での評価の差を少なくするための試みである。大腸ポリープの経過観察での研究でも大腸内視鏡を2回行ってクリーンコロンとするなど、ヒューマンエラー(ここでは見落とし)を極力少なくする試みがされている。エビデンスの高いデータを創るためにはその他にも様々な工夫が必要であろう。
 さて、しっかりとした臨床研究で得られたエピデンスは、患者さんや担当医が臨床的な決定をする際の根拠となる。すなわち患者さんに説明するときのデータなのである。この場合、最も重要なことはそうしたエピデンス創りに自らが参加・協力することである。自らの参加したデータであれば、高い説得力で患者さんに説明できるであろう。
 今後も多くの大規模な臨床研究が行われるであろうが、消化器内視鏡学は医学分野の中でも日本が世界で最もリードしているところであり、日本が最も優越性をもてる分野である。今後も日本が世界をこの分野でリードしていくためにも消化器内視鏡分野において質の高い臨床研究を行っていく必要がある。
 教育講演 12:内視鏡を用いた上部消化管運動機能の評価

 川崎医科大学 総合臨床医学 楠 裕明(くすのき ひろあき)

 近年の内視鏡機器の進歩はめざましく、それに伴う消化管疾患の診療技術の進歩には目を見張るものがある。しかし、内視鏡では世界をリードする本邦の内視鏡エキスパート達も、消化管運動についての興味は薄く、検査中に実際の前庭部収縮運動を見ながら、その出現頻度や強さに注意を払う内視鏡医は少ない。この理由としては、本邦の内視鏡学が胃癌の診断と内視鏡的治療を中心に発展してきたこと、本邦の内視鏡メーカーがそれを支える多くの新しい技術を開発してきたことなどがあるが、保険適応のある一般臨床で、簡便に実施可能な運動機能検査が無かったことも大きく関与している。従って、本邦の消化管運動研究は多少欧米に後れを取ることとなったが、現在もいくつかの施設で多くの研究が行われている。われわれは体外式超音波を用いて生理的に多くの項目を同時に評価できる方法を考案し、薬効評価などに用いることで、注目されつつあるが、内視鏡を用いて消化管運動を評価する方法もいくつかあり、今回はそれらの方法を解説します。ミンクリア散布で前庭部運動が低下するメカニズムなどの消化管運動機能の基礎知識は、内視鏡医としても必ず役に立つものであると信じます。

内視鏡検査で可能な消化管運動のチェック
#胃内の観察・・・内視鏡の胃内挿入時に、胆汁混じりの黄色の胃液の貯留や、とき卵状の浮遊物の胃壁付着に遭遇することがある。これは空腹期に十二指腸の胆汁が胃に逆流した証拠であり、十二指腸への過剰酸暴露などで生じる現象です。また、MMCと呼ばれる空腹期の消化管強収縮や幽門輪の機能低下なども関与した現象と言われています。
#前庭部運動の観察・・・ もし、ブスコパン注射などの前処置なしに内視鏡を施行すると、前庭部収縮はl分回に3回の頻度で正確に収縮します。これは胃の拡張刺激によって体上部大彎のトリガーが刺激された結果発生するため、内視鏡で送気した後にも生じます。
#幽門輪の開閉・・・前庭部収縮が幽門輸の2〜3cmまで到達したら幽門輸は閉鎖しますが、これは前庭部が食物を粉砕するために必要な現象です。内視鏡を幽門輸に挿入しようとすると幽門輸が閉鎖する現象は、内視鏡によって収縮と同じ刺激が生じた結果である可能性があります。
超音波内視鏡を用いた食道運動の観察
細径超音波を用いて食道の収縮を観祭することが可能であり、水嚥下による食道の収縮による筋層の肥厚を確認することで食道運動を評価可能である。特に内輪筋と外縦筋を別々に評価可能なため、どちらが優位に収縮しているかを判定できる。
鉗子口挿入式pHセンサーを用いた上部消化管のpH測定
鉗子口挿入式pHセンサーで内視鏡下に上部消化管の様々な場所のpHを測定する。GERD患者や機能性ディスペプシア患者では、下部食道や十二指腸のpHが健常対象より低いという報告もあり、酸クリアランス能力の評価が可能であると考えられます。



(13/5/29水曜分)
 診療後の夜に、ユニ・メディカルさんより三人来られて、当院の画像ファイリングシステムM-FILEと、東芝製超音波断層検査装置との統合が完成した。検査中の画像が同時進行で瞬時に診察室のM-FILEに取り込まれる。検査画像は、既存の検査画像を含めて診察室のM-FILEより、簡単に検索して、診察室の大画面モニターで閲覧できるので、患者さまや家族への説明が、以前より格段に分かりやすくなった。エコー1検査あたり、100枚の画像が保存できる設定にしてもらった。(余裕すぎる。)
 これで、診察室の大画面モニター一つで、上部消化管内視鏡検査画像・下部消化管内視鏡検査画像・超音波断層検査画像をM-FILEで、胸部・腹部などのレントゲン検査画像・骨密度検査(DIP法)結果をNew NAOMIで、統一して供覧できるようになったわけだ。
 参考:「画像ファイリングシステム M フ ァ イ ル エコー検査画像取込み ご提案書」 「御見積書」 ユニ・メディカル株式会社 pdf書類(0.99MB)






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